第39章 夫婦の絆 〜信長様誕生日sp〜
もうすぐ信長の誕生日。
そして、結婚をして夫婦になってから初めて迎える彼の誕生日だ。
「あ、信長?うん、大丈夫だよ。もう家にいるから話せるよ」
けれども、海外進出を始めた織田プロの社長である信長は多忙を極めていて、今も海外でお仕事中で離れ離れだ。
「私は元気だよ。信長は?ちゃんと寝てる?」
だからこうしてスマホ越しに話をする日々がここ最近は続いている。
「信長に会えないのは寂しいよ。でもあと三日もしたらしたら戻って来れるんでしょ?」
今回の出張は二週間の予定で、あと三日でその二週間が終わる。
はずだったのに……
「えっ?予定変更?いつ戻れるか分からない?」
予定だとちょうど誕生日の夜には戻って来れるはずだったのに、何と出張延長が決定。しかも先方の予定がハッキリせず何日かかるか分からないと言う。
「悪いな」と優しい声がスマホの向こうから聞こえる。
「ううん。大丈夫。信長も無理しないでね」
寂しいと言ってしまいたいけど、言ってしまうと彼はきっと自家用飛行機で無理をしてでも帰って来てしまうから、寂しいと言う言葉は飲み込んだ。
「うん。大好き、おやすみなさい」
名残惜しいけどスマホを置いて、ソファに横たわった。
「はぁー、本当はとても残念……」
だって結婚して最初の信長の誕生日。しかもやっと会えると思ってたのに会えなくなっちゃったなんて……
「こんな事ならついて行けばよかったかな?」
信長は長期で家を空ける時は、必ず一緒に行くかと声をかけてくれる。
でも、私は最後の大学生活と仕事と少しだけ奥様業に励んでいるため何かと忙しいのも本当で、今回も卒論や教育実習(お忘れでしょうが私は一応教育学部)の関係で一緒に行けなかった。
「……そういえば、延長理由って何だろう?」
予定を繰り上げて早く戻る事はあっても延びる事は珍しい。
「って、考えてもきっと私には分からない大きな仕事だよね」
信長の業務内容は大まかには理解しているつもりだけど、やはり分からないことの方が多くて、結婚した今でも彼の仕事をサポートするなんて事は私にはとてもハードルの高そうな事だった。
だから、信長が話してくれるまではあまり聞いた事がなかったんだけど…
今回ばかりは延長理由を聞いておくべきだったと、私は後日後悔する事になる。