第29章 突然の・・・
「ふあっ、……あっ、やっ、あっ、…んぅーーーッ」
彼の指の動きに合わせて込み上げてくる快楽に押し上げられ、ピクンッと体がしなり、その反動で唇が離れた。
「……ぁ、……はぁ、ぁ、はぁ、」
息は軽く上がっていて空気を求めるけど、スイッチの入ってしまった体はどうしようも無く好きな人とのキスを求めてしまう。
腕を伸ばして信長の首に巻き付けると、そのまま引き寄せて自分から口づけた。
「はぁ、、もっと…したい。会えない分のキスを、たくさんして?」
会えない夜はこのキスを思い出して心を温められるように、私の唇に何度も触れて刻んで欲しい。
「…ふっ、欲しがりめ。だがやっと言ったな」
私の言葉に笑うと、私の頭の後ろに手を当てて、甘くて深いキスをしてくれる。
「んっ」
肌を重ね合わせ抱き合い口づけをしているだけで私は本当に幸せで…
「セナ 愛してる」
沢山のキスと愛をくれる信長が、この時どんな気持ちでプロポーズをしてくれていたかなんて、私には全然分からなくて…、
「私も大好き。信長が好き」
彼に近づきたいとか、大人になりたいとか、子供扱いしないでと言いながらも、あの時の私はやっぱり子供だったんだと思う。
結婚とか、海外での生活とかを急に言われて、今ある自分の生活や環境を全て手放して信長の胸に飛び込めるほどの勇気を、この時の私は持つことができなかった。
でももしもこの時、信長のプロポーズを受けていたら、私達の未来は違っていたのかな?
順調に育んでいると思っていた私たちの関係を揺るがす事件が数日後の舞台挨拶で起こるなんて、この時の私は微塵も思ってはいなかった。