第11章 かざぐるまの恋 【完】
あれから善逸に返事は書かなかった。
最後の手紙だけは
『燃やして』と書かれていなかったので
今でも大事にとっておいてある。
良いよね?善逸。
チュン太郎が時々
藤の花を持ってきてくれたけど
それもやめてもらった。
思い出すことがありすぎて
辛いだけだったから。
私が願うのはただ一つ
「どうか、生きていて欲しい」
離れていても、季節の移り変わりだけが
善逸と同じ時を過ごしているんだと
思わせてくれる唯一のものだった。
春になれば
あなたもどこかで桜を見ているかな?
夏になれば
風鈴の音をあなたもどこかで聞いているかな?
秋になれば
夜長に私のことを思い出してくれているかな?
冬になれば
寒さに凍えて震えてないかな?
考えるのは
善逸、あなたのことだけ。
もし、この気持ちに名前をつけるとしたら
それは「かざぐるまの恋」
風が吹かないとかざぐるまは回らないように
あなたがいないと
私は息をすることさえ忘れてしまいそう。
自然と風が吹くことを
私はずっと待ち続けます。
「 あらざらむ
この世のほかの
思ひ出に
今一たびの
逢ふこともがな 」
(私もいずれは死ぬのでしょうから
あの世へ逝くときの思い出に
もう一度だけでも
あなたにお逢いできたらいいのに)
善逸、いつかまた、どこかで。
ー 完 ー
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