第10章 進む
二回戦もあっという間に終わり、三回戦…準決勝が始まる。
轟対成瀬、爆豪対常闇。
心の準備が出来ないまま、三回戦が始まる、アナウンスが鳴り響いた。
「幼馴染みで推薦入学のとんでもねぇやつら!!
しかも噂じゃ青春しまくってる美男美女!!
果たして本気で戦うことが出来るのか!!
轟対楓風!!
アーユーレディー
スターーーーート!!」
開始の合図がなり、
楓風と轟は一歩、距離をつめる。
だが両者、攻撃はしない。
「まさか、楓風と戦う日がくるなんてな…
人生何があるか分かったもんじゃねぇな」
『でもきっとこんな機会もうないだろうから、
お互い手加減なしの全力で…行こっか』
「そうだな」
二人の雰囲気と目付きが変わると、
お互いを確かめるように頷き、同時に
轟は氷を
成瀬は風を
生み出した。
そしてそれはそれぞれが立っている中間の場所で、
激しい音と衝撃、風と共に砕けた。
「おぉっと両者いきなり最大出力ぶちかました!!
手加減とか遠慮とかしないのかよ!!」
そしてそれを何度も繰り返す。
威力が同じで、両者とも攻撃は一度も当たっていない。
綺麗な、ままだ。
すると楓風が突然、足場を作り、空中へ立った。
「おっと成瀬!!ここで逃げたか!?
にしてもそんなことまで出来るのかよ!!」
「…そろそろ、だよな」
『やっぱ焦凍は…分かってたんだね』
攻撃をしながら会話を続ける両者。
よく見れば、二人とも体に霜が降りていた。
楓風は、体が大きく震えている。寒がりだからだった。
轟は、幼馴染みで楓風をよく知ってるからこその作戦だった。
「…あぁ。
だが、お前が暑がりでも左しか使ってねぇよ」
氷結を出し続けながら近付く轟。
楓風は空中で移動しながら首をかしげた。
『焦凍、でもさっきので…!!』
「…お前と緑谷のおかげで、大切なものを取り戻した。
だからこそ、きちんと精算してからじゃねぇと使えねぇ、って
俺だけすっきりしててもダメだと、思ったんだ」
楓風には、その意味が充分伝わった。
(きっと、お母さんとちゃんと話してからじゃないと、ってことなんだよね
自分だけじゃなくて、お母さんのこともきちんと救ってから…)
『…そっか…!!』