第9章 君のヒーロー
何やら二人は話しているようだった。
「君の!!
力じゃないか!!」
緑谷の必死な叫び声が響く。
楓風と爆豪は、顔を見合わせた。
爆豪が楓風に言った言葉と同じだったからだ。
『...流石、幼馴染みだね
これで焦凍も、目冷ますかも』
「ッチ…俺とはちげぇわ、クソが!!」
『…っ、焦凍!!頑張れ!!』
焦凍は緑谷のその言葉と楓風の声で、
楓風と母に言われた言葉を思い出した。
____血に囚われることなんてない。
____何があっても焦凍は焦凍だから、焦凍が好きってことに変わりはないよ!!
「『なりたい自分に、なっていいんだよ』」
右手に、炎を纏う。
会場が、一瞬にして熱で包まれた。
そして見ていたエンデヴァーが、まさかの親バカを発揮する。
「やっと己を受け入れたか!!
これからだ!!俺の野望をお前が果たせ!!」
『…お父さん、実は焦凍のこと大好きなのにね』
氷が一瞬で熱され、爆発が起こる。
視界が煙や炎て包まれ、晴れたときにはもう
決着がついていた。
ミッドナイトの声が会場に響く。
「轟くん、三回戦出場!!」
楓風は微笑むと
『っし!!じゃあ私も頑張ってくるわ!』
と気合いを入れて去っていった。
「…お父さん、ってよんでんのかよ」
爆豪の小さな独り言は、誰の耳にも届かず消えた。