第8章 すれちがい
突然の、友達からの告白。
普通の女子ならば、こんなあからさまなアピールには気付くだろう。
だが楓風は、まったくといっていいほど気付いていない。
今、初めて自分への好意が恋愛的なものだったと知ったのだ。
驚きのあまり、固まって動かない。
二人の間に緊張した空気が流れる。
「あら、なんかごめんなさいね
ご飯出来たから呼びに来たのよ、うふふ」
突然ドアが開き、二人同時にビクッとなってしまった。
* * *
なんとなく気まずいまま、ご飯を食べ終わり、楓風は勝己の見送りで外に出た。
『…あ、のさ』
緊張して声が少し裏返ってしまう。
「…ハッ、俺は優しいから待っててやるわ!!
ちゃんとその無駄にちいせぇ頭で考えとけ」
『…ふふ、うん、勝己は本当優しいね
ありがとう』
混乱したままの頭で、楓風は笑って見送った。
(…つい焦って告っちまった
楓風は半分野郎のことで悩んでただろうし、まだ言うつもりなかったのに
余計悩ますこと言っちまったな…。
…でも)
二人がすれちがってるときに言うのがチャンスだと思ってしまった自分に、腹を立てる勝己だった。
(クソ、あいつに負けるの分かってて…
楓風困らせて
最低だな、俺は)
後ろを見れば、まだこちらに手をふっているのが見える。
「…アホ、風邪引くから家入れや!!」
なんて叫びながらも、顔はにやけてしまっているのだった。
(あいつを好きにならないなんて、無理に決まってんだろ)