第1章 スタートライン
*楓風side*
「楓風、雄英合格したんだってね!!
おめでとう!!」
だんだんと卒業が近付く頃の放課後。
一体どこから情報が溢れ出しているのか。
女子の情報網は舐めてはいけないな、とつくづく思う。
(私だってついさっき知ったのになぁ、みんな凄い…。)
『えへへ、ありがとう!!』
先日の雄英高校、推薦入試に無事合格出来た私は、すでに有名人扱いだった。
「友達が雄英行くなんて、一生の自慢だよ!!
それに加えて楓風は可愛いもんね」
私の合格を知った人から、次々と祝福を受ける。
嬉しい反面、自分のことを余計に良く思わない人もいるんだろうなぁ、と悲しくなった。
「雄英行ってもうちらとも仲良くしてよ!?」
『もちろんだよ、だって大切な友達だもん!』
とは言ったものの、内心は複雑だった。
(私って自慢されるためだけに利用されるのかな、それはちょっとやだなぁ
自慢されるの嬉しくないわけじゃないんだけど…
なんかみんな、結局都合いいんだよね…
…ってヒーロー志望がこんな性格悪かったらダメだよ…。)
悶々と思考を巡らせたが、結局ネガティブに考えてしまって
周りにはばれないくらいの小さな溜め息をついた。
(外面だけ良くて性格悪いのも、独りで考え込んでネガティブになるのも
雄英行くまでには直さなくちゃなぁ)
また1つ2つと課題が見つかって、肩が重くなった。
『そういえば今日もママ達帰って来れないっていってたな、そろそろ帰って夜ご飯作らないと…』
本当のことではあるが、もう話を切り上げて早く帰りたかった。
「そっかぁ、楓風は大変だね!!
何でも出来る才能あって羨ましいよ」
ほんの一瞬だけ、私の中にピシッとヒビが入って思考が止まり、貼り付けてある笑顔が消えた。
『そんなことないよ、出来ないことだらけだし…
みんなだって才能あるじゃん!!
じゃあ、もう帰るねっ、バイバイ!!』
私はわざとらしく焦るふりをして、走って教室を出た。
(大丈夫だったかな…。
ちゃんと自然だった?おかしくなかった?
…嫌われることいってなかった?
もしかしたら、私がいなくなった今、悪口言われてるのかも…
また失敗しちゃったかなぁ、もっと考えるべきだったよね…)