第11章 天然と鈍感
*楓風side*
焦凍はお父さんに会いたくないこともあってか、荷物を持ってすぐに来た。
落ち着かないまま、二人で買い物に行ってご飯を作って二人で食べ、今、私はお風呂に入っている。
焦凍は一緒に入ると言って聞かないので、無理矢理先に入らせた。
『え、ほ、ほんとに今日来ちゃった…。』
緊張を隠すように、湯船に口までつかってプクプクとならす。
(上手く、出来るかな
初めての女って重くない??面倒くさくないかな…??
焦凍は慣れてそうだもんね…。
むだ毛の剃り残し、ないよね…
全身綺麗に洗ったし…)
『っていやぁぁぁぁぁ!!!!
あぁぁぁもう…!!!』
私は恥ずかしさや色々な感情に堪えきれず、思わず叫んだ。
狭い浴室に、声が響きわたる。
『…一回落ち着け、私』
赤い顔を手で覆いながら、呟いた。
静かになった空間に、外から何やら音が聞こえる。
湯船に浸かったまま、見える訳でもないのにドアを見つめる。
(焦凍??どうしたんだろ)
するとドタドタと音が近付き、ドアに人影がうつった。
『…っえ?どうしたの焦凍』
立ち上がって掛けていたバスタオルを取って巻こうとすると
ドアがガチャ!!と音をたて、開いた。
「楓風、どうした大丈夫か
…お。」
『…………な、!?』
私はバスタオルを手に持ったまま、固まった。
思考が停止していて、手が動かない。
上手く声が出ない。
「…楓風の悲鳴が聞こえたから心配して来たんだが
…悪ぃ、もう我慢できそうにねぇ」
焦凍は余裕の無さそうな顔でそう呟くと、
手に持っていたタオルを私の体に適当に巻いてひょい、と抱き上げた。
『……っえ、しょ、焦凍…!?
は、恥ずっ…ねぇ、降ろして…!!』
やっとのことで状況を理解し、足をじたばたと動かす。
そしてそのまま、部屋のベッドにおろされた。
『...っ、あ、あの…んぅっ…!』
必死に話そうとしたものの、そのまま口を塞がれる。
「…楓風」
(そんな、目で見つめられて…
そんな愛しそうに、優しそうに名前呼ばれて
待ってなんて、言えるわけ…ないじゃない)