第9章 新規海兵育成記
「悪い子みーつけた」
「はわっ」
まるで幼い子供に言うかのようにそう口にしたクマラは、振り返りかけたオーブンの頭に抱きつく。その際に目を隠されたオーブンは、背中に感じる父の温もりと少しばかりのいたずら心を感じて先程までの戦闘態勢を解いてしまった
そのまま視界を奪われつつ、オーブンは事情があり自分の意思でここに居ること、大人しく帰ればクマラも息子を傷つけなくて済む旨を伝えられる。本当ならば連れ帰って会えなかった分を埋めるように甘えて過ごし、自分がどれだけあの日から成長したかを見て欲しかったオーブンだが、そこまで言われても駄々をこねる程の歳ではない
少し名残惜しそうにクマラの頬に自分の頬を擦り寄せたオーブンは、渋々と言った様子で船に戻っていく。クザンはその様子を見てハッとし、クマラの腕を掴んだ
「あっ、あんた海賊に子供いるのか!?」
「そうだが」
「ま、まじか……」
子持ちであることを知ったクザンは、あの二人の恋心を想い他言しないようにと口を閉ざした。そんなクザンを他所に、次は別の子だとクマラはスタコラと歩いていく
そんなクマラについて行き、少しでもあの強い理由を探ろうと考えたクザンもそれに同行。クマラ自身止めようとせずそのまま着いてこさせた
「手加減……!俺を舐めているのか!センゴク!」
「っ……」
クマラが近付いている中、カタクリは圧倒的力の差を知りつつ自身が未だに敗れないことで手加減されていることを感じ取る。舐められていると思っているカタクリを他所に、センゴクは自分では対処に疲弊し過ぎる、クマラが来るまでは耐えようと拳を握った
「お前も来てたんだな、カタクリ。後でかいな」
「!パパ……!」
センゴクを目の前にしている中、カタクリは後ろからやってきた父に再会の証にと熱い抱擁をする。3m程にも大きくなったカタクリに対し、背丈はリンリン寄りかとクマラは一人涙ぐんだ。無論、息子に身長を抜かれたという意味で
この後、ダイフクが船内から顔を出してカタクリの現状を目にし、羨ましいとクマラを強奪した事で兄弟喧嘩が勃発。敵そっちのけで行われる喧嘩にクマラも飽きれ、早く帰れと二人をビッグマム海賊団の船へと投げ飛ばしたのはここだけの話