第9章 新規海兵育成記
クマラがガープの補佐について早一週間。中将という立場でありながら仕事放棄が目立つガープはここ一週間しっかり仕事をこなしていた。明日は槍でも降ってくるのかと噂する兵士がいる中、今日もガープの執務室ではペンを走らせる音が聞こえてくる
「うぅ……指疲れた……」
「お前が貯めに貯めるから、一週間経っても量が減らないんだろうが。自業自得だ」
「うっ……」
クマラに書類の管理をされ、逃げようとすれば全力で追いかけてきて捕まるのがオチのガープ逃亡劇。センゴクやおつるとやっと仕事をしてくれたと少し安堵している中、ガープだけは面白くなかった
クマラと同じ空間に入れることに最近は喜びを見いだしているが、それだけではやはり仕事の……ましてや書類仕事に意欲は湧かない。頑張ったと褒められる時の子供のような嬉しさもまたいいが、やはりなにか物足りないのだ
なにかねだるべきか、とペンを走らせつつ考えたガープは不意にクマラの方を見る。海軍帽を深く被っている為帽子の鍔と影で顔半分が見えにくく、補佐官という事もあり将校未満の海兵が着る袖無の服を身につけたクマラ。マントは無く、サイズは急拵えだったからか少しピチピチだ
「……服新調するか?」
「どうしたんだ、いきなり」
終わった書類を整理していたクマラに訝しげに見られたガープは、目のやり場に困るのかそのまま視線を逸らす。クマラの体のラインがくっきりと分かるピチピチの服は、長い航海で溜まっているガープには少々厳しいもののようだ
じっくり見ると意識してしまったのか、徐々に熱を持ち始める股間にモジモジと足を動かすガープ。それに気付きクマラは「御手洗位行ってこい」と口にした
「あ、ありがと……」
少し身体を前に倒しつつ、ガープはいそいそとトイレのある方へと歩き始める。パタンと扉が閉められるのを確認したクマラはまだ残っている書類を分類分けするのであった