第13章 出会いと別れのログ
少年はビクビク震えていた。徐々にこちらへと近付くその存在に恐怖するでなく、喜びで感極まって
少年の初恋は一目惚れから始まった。戦闘中に見せる荒々しくもどこか美しさを持つ体術から、日が経つにつれてその目に映す彼の表情の一つ一つに目を奪われる
無表情そうに見えて微かに動く目元や眉、口元の少しの変化に目が行くほど少年は恋に溺れていた。その目に自分が映ったと思えば喜び、目が合うとわかると途端に恥ずかしくて顔を逸らしてしまう
そんな少年に、気持ちの容量が限界値に達する事態が発生する。その一目惚れした相手が今、目の前で綺麗な飾りを持ってたっているのだ
「お前のそれと、交換しないか」
凛々しい顔立ちから発せられる声は男らしく太いもので、少年は予想していた声と違い余計心臓の音が忙しなく響く。震える声で「どうぞ」と言い差し出した首飾りは、少年が初めて敵から勝ち取った、銀のチェーンと型にはめ込まれたルビーの首飾り
それに彼……クマラは目を細め、対等な交換をしたいとランクを下げたものを求めた。クマラの目から見て相当値の張る首飾りだと思ったからだが、少年にとってクマラが手にする腰飾りはこの首飾りと同等かそれ以上に見えて仕方ない
クマラの持つ腰飾りは在り来りな、本当の飾りだ。世界を巡ればいつかは市場で出会いそうなものだが、少年は勘でそれが手作りであると見極めている。だからこそ、少年には価値のあるものに見えるのだ
「それでいいならいいが……」
「!」
クマラからしてみればお手製のもので宝を手に入れるようなもので、少しばかり罪悪感が残るが本人が引かないためそれに了承。クマラに合わせて作られた腰飾りの為少年にとっては大き過ぎるが、それをクマラはすぐに理解し機転を利かせて一度しゃがみこむ
「えっ、あっ……」
「ん、今はこれでいい。大きくなったら腰布にでもつけろ」
「ふぁい……」
グルりと腰に巻き付けられた腰飾りを指でなぞり、ポンポンと少年の頭を優しく撫でたクマラはその場を去る。上裸のクマラが目と鼻の先に来て、腰に触れて頭まで撫でた。限界値が突破した少年は数分後、顔を真っ赤にして地面に倒れ込む
「?今なんか音したか?」
「……ほんと天然タラシだな、お前」
「???」