第4章 episode4
ゴホゴホ!
私は気まずさに負けて口にしたコーラにむせた。
「えぇ!大丈夫?」
心配してくれたのは、佐藤さん。
『すいません。コーラって初めて飲んだので。。』
兄が炭酸が苦手なため、実家にも今の家に炭酸飲料があったことがなく
私は、子どものころから炭酸を飲まず嫌いになっていた。
そんな話をポツリと話すと2人は、人生損してる!と言って笑った。
もしかしたら、馬鹿にされたのかもしてない。でも、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。
空気が少しいい方向に変わった気がした。
笑っていた2人も真剣な顔に戻り、そして富永さんが話し始めた。
「マコトちゃんが、みんなのネタ見てんだよね?んでアドバイスしてる。
先輩らが頼んでるって聞いて、高校生に?マジかよ。ないわ~。って思ってたんよ。
正直。でも今日のライブ見て焦った。マコトちゃんにアドバイスもらったって言ってた奴ら
全員確実レベル上がってた。あれは練習量とかでどうにかなるもんじゃねぇんよ。
もっと根っこに修正が入った感じ。わかっかなぁ?」
「元々お笑い好き?ダウンタウンとかウッチャンナンチャンとかジャルジャルとか…」
「いや!そのラインナップはお前が好きなだけだろ!」
『すみません…特にはないんですけど。。それがなにか…?』
「ごめん!全然関係ない!でさ、聞きたいんだけど、今日の俺らのネタ見たよね?
何かあったか聞きたいんよ。メモしてたのは見えてたんよ。
会場で聞けばよかったんだろうけど、俺らのあれこれはあんまみんなには聞かれたくないんよ。」
この言葉に、彼らは他の人たちと違うと感じた。
芸事に関する意識とプライドの高さに震えた。
何故いつもわざわざ別室を借りて練習しているのかも、わかった気がした。
彼らは努力を美徳でもなんでもなく、努力は努力として
人に評価されるための駒として決して利用しない。
だから、練習姿を見られたくないし
私のこともこんなところまで連れ出した。
『メモはしていました。でも、そんな大したことでは…』
2人に対して思わず逃げ腰になってしまう。
「それでもいいんよ。率直に聞かせてほしい。」
真剣な眼差し。断れない。
その瞳に魔法にかけられたかのように
私はカバンからノートを取り出し、今日の水溜りボンドのページを開いた。
ここから「水溜りボンド」と私が始まった。
