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夢過ぎる水溜りボンド

第1章 episode1


今日から私は新しい人生へと歩みだす。



朝。空色のカーテンに陽が当たる。
いつもなら、学校へ行かないといけない気持ちと葛藤している時間。

「そっか…今日からもう行けなくてもいいんだ。。」

行けなくていい。
そう、行かなくていい。ではなく
行けなくてもいい。
親のあの目からも解放される。

私はマコト。今日から通信制の高校の2年生。
昨日までは、このあたりじゃちょっとした有名な中高一貫の進学校の学生だった。
外へ出られなくなったあの夏の日から
枯葉が風に乗って空を舞うこの季節まで、よく耐えた。
そう自分に言い聞かせながら、窓を少し開けた。



ありきたりで恥ずかしいけれど、学校を辞めた理由は、いじめ。
小学校のころも、5-6年は不登校だった。それも理由は、いじめ。
今までの学校生活は2つ上の兄、カオルがずっと私を守ってくれていた。
兄は学校の人気者で「人気者の妹」は自ずといじめてはいけない対象になるのだ。
そんな最大の盾が卒業し、地元から遠く離れた大学に行った春から
小学校以来のいじめが再開した。

女のいじめは、たちが悪い。必要以上に陰湿で、醜い。
男からの慰めや哀れみといった類の同情は、私をずっとみじめにする。

耐えるために、つい感情を押し殺そうとしてしまう。
元々こんな人間ではなかった。
大人やいじめがそうさせた。

「やられる人間にも問題がある。」

今思えばテンプレートのようなワードだけれど
小学生の私の心に変化を与えるには十分だった。

感情を殺し、皆に合わせ、欲しがっている言葉を並べる。
ずっとこのまま生きて行ければそれでいい。
そんなことも思う日もあった。
でもそれでいいのか?子どもながら自問自答を重ねた。

盾の効力が失われるまでの間、まるで資格試験のように
人の気持ちや行動についての意味を勉強した。
これが自分を守ってくれる新たな盾になってくれると思ったから。

しかし、現実はそんなに優しくはなかった。
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