第2章 episode2
ライブ会場に着くと、男女ともに若い人たちが集まっていた。
たくさんの人がシャツやパンツに〈STAFF〉や〈GUEST〉、〈ACT〉と書かれたシールを
貼って慌ただしく動いていた。
兄もポケットから〈ACT〉のシールを取り出し自分の腰当たりに貼り
私を席に案内し、ここで見てて。とだけ告げていなくなった。
程なく会場が暗くなり大きな音楽が流れだした。
慣れない環境に戸惑っていると、次は音に合わせてライトが会場を駆け巡る。
始まったのは【お笑いライブ】。
兄が音楽が好きなことは知っていたので、てっきりバンドのライブだと思っていた。
お笑い…?お兄ちゃんが??
状況が呑み込めないまま、ステージを見ていると
コントや漫才、フリップ芸など様々な人たちが登場した。
どの人からも、人を笑わせたいと溢れ出る情熱を感じた。
お客さんからは、次第に会場が一つになっていく熱を感じた。
その熱は徐々に私の心も温かくさせた。
…凄いな。好きかも、この空気。
そんなことをぼんやり考えていると
兄がステージに元気よく現れた。
派手なメガネに目の覚めるような黄色いシャツ
家では見たことなかった姿がそこにあった。
「どぉーもー!こんにちはぁー!Pさんと申しまぁーすッ!」
他の人と違い、マイクを使わず地声を張り上げて
パフォーマンスを進める。
初めて見る兄に胸が熱くなった。
「最後に…今日は、知ってる方もいらっしゃるかと思いますが
僕のこのサークル最後のステージです。」
パフォーマンス終了後
兄は、十分に笑いで温まっている会場の中ゆっくりと話し始めた。