第87章 *懐刀インパクト*
ブロロロロ..!!!
地に響くタイヤの走行音が大きくなるにつれ、一団の目に見えてきたのは、片腕に大きな盾と先の尖ったハンマーのようなものを装着した、全身鋼鉄で出来た巨大な装甲車だった
バウル『なんだあれは!?岩のゴーレムか!?』
リリア『いや、違う..この鉄と油の匂いは!総員構えろ!来るぞ!』
全員が武器を構えると同時に、装甲車は一気にエンジンを全開にして、地を蹴り上げ突進してきた
ブルルルルルンっ!!
リリア『ちっ、デカい図体のくせに動きが速ぇな!』
突進をヒラリと上に飛び上がって避け、落ちる勢いそのままに魔石器を振り下ろす
ガンっ!!と鈍い音を立てて装甲車の脳天を叩くが、僅かに凹むだけでその反動が一気にリリアの細腕に跳ね返る
リリア『っ、かってぇな!!』
バウル『右大将殿っ!そこから離れてください!!はあぁぁ!!』
炎を纏わせた魔石器を振りかざし、後方に飛び退くリリアと入れ替わるように走り込むと、今度は正面から切り込んだ
しかし、装甲車の盾の部分がそれを防ぎ、バウルにもリリアが感じた反動が返ってきた
バウル『ぐうっ..!なんなのだこの鉄の塊は!』
セベク『リリア様、バウル様!』
シルバー『俺達も戦います!』
二人の苦戦する様子に危機を感じ、手助けにと駆けてくるシルバーとセベクを筆頭に、近衛兵たちも次々と装甲車へと戦いを挑む
しかし、何度切りつけても浅い傷跡にしかならず、両手に携えた盾が攻撃を守り、ハンマーが振り下ろす一撃の重さがこちらを寄せ付けない
おまけに吹き荒れる山風に体の動きが制限され、全員満足に戦えず体力と魔力がすり減っていく
ユウ『みんなが束になっても全然動いてるし、なんなのあれ..』
『分かんない。でも、闇の手を使えば少しはみんなを助けられるかもしれない。私も行く』
ユウ『気をつけて』
『ん』
小さく頷き、ペンを強く握りしめながら戦線に向かっていくと、装甲車へ向けて闇の手を向かわせる
『(お月様のところで見た、あのゴーレムと戦った時みたいに、おっきな闇の手を出せれば..)』