第34章 恋情記 前編
23年前
「グリフィンドール!!」
ワァァァ!!
組み分け帽子が高々と寮の名前を叫ぶ
すると、赤いローブを着た集団が、一斉に歓喜に湧いた
「さぁ、行きなさい」
椅子の隣に立つマクゴナガルが促してくる
ホグワーツに入学したことと、グリフィンドールに入れたということに素直に喜び、11歳のシリウス・ブラックは笑顔で駆けていった
「おめでとうシリウス!」
「おめでとう!!」
「よく来たな!」
皆が口々に自分を歓迎してくれる
それがなんだか新鮮で、とてもくすぐったかった
シリウスの実家 ブラック家は純血主義で、マグルや「血を裏切るもの」すなわち半純血を毛嫌いしていた
古くからの「決まり」にこだわり、ブラック家はスリザリン・ブラック家は純血婚・さらには「例のあの人」ーーヴォルデモートに仕えることが生まれながらに決まっていた
が、シリウスはブラック家でも異端児だった
彼はマグル製品が大好きで、ちょくちょくマグルの雑誌を家に持ち込んでいたのだ
もちろん、それを知った両親は良い気なんてしない
シリウスがマグルと関わりを持つたびに叱り、純血主義で在らせようとする
しかしそれも無駄だ
シリウスはそんな両親に反発し、部屋中にマグルの製品を置いたり、わざと雑誌を家の机に置いたりした
古臭い決まりに縛られず、自らの意志を貫こうとしていたのだ
「ねぇねぇ、貴方ブラック家の子供でしょ!
私カーリー・サンダース!仲良くしましょ!」
一人の女子が話しかけてくる
ヘーゼル色の瞳が特徴的な女の子
「サンダース」といえば、純血の家柄だ
さらにシリウスが「ブラック」の子供だと言って話しかけてきた
「………………」
しかし、シリウスは無視した
「シリウス、返事くらいしたら?」
「ヤダね、めんどくさい」
「ははは」
ずっと黙っていると、ジェームズが話しかけてくる
彼は先程、汽車でコーパメントが一緒になった子だ
記念すべき、シリウスにとっての友達第1号
シリウスとジェームズはとても気が合い、入学早々騒ぎすぎて先生に怒られたくらいだ