第32章 アズカバンの囚人
すると、ペティグリューは助けを求めるようにハリーに近付く
「助けてくれハリー、君のお父さんのジェームズなら、私を殺しはしなかっただろう
情けを掛けてくれただろう」
が、ハリーは後ずさる
「ロン、私は君のネズミだった
良いペットだったろう?どうか助けて……」
「っ………」
ロンも、気味悪そうに後ずさる
怪我した足を引きずって、ハーマイオニーの所へと逃げる
見かねたシリウスが叫んだ
「甘かったなピーター
ヴォルデモートが殺さないなら私が殺す!」
しかし、ハーマイオニーが「やめて!」と叫び、ルーピン先生がギリギリで止める
「やめろシリウス!」
「離せリーマス!
ハリー、この男はっ…」
「分かってます
でも殺してはダメだ、城に連れて行こう」
ハリーが答えた
その冷静な返答により、シリウスも落ち着く
ペティグリューを睨みながら、乱れた服を整える
「あぁ、なんと慈悲深い…
ありがとう」
ペティグリューはハリーに拝むように礼を言う
手を合わせては、涙を流して
しかしハリーは流されない
「勘違いするな
お前を城に連れてって、ディメンターへと引き渡す
僕の父さんは、お前みたいな奴のせいで親友が殺人者になるのを望まないだろうと思っただけだ」
シリウスが、誇らしそうにハリーを見た
その表情はまるで実の息子を見ているようで、優しかった
ハーマイオニーがルーピン先生に聞いた
「スキャバーズーーいえ
この人、ハリーと3年間同じ寝室にいたんです
例のあの人の手先なら、なぜハリーを今まで傷付けなかったのでしょう」
確かにそうだ
殺そうと思えばいつでも殺せたはず
ましてやたかが子どもだ
彼が本気になれば簡単だった
まあ、それは「本当にデスイーターなら」の話だが
「深い意味はないよ
自分のために得になる事でなければ何もしないやつだ」
ルーピン先生が言った
それは、部屋中に響く
ペティグリューは、静かに息を飲んだ
「噛んで悪かったな
少し痛むだろ?」
「少しじゃないよ、足を食いちぎられるかと思ったよ…」