第32章 アズカバンの囚人
ポケットから小瓶を取り出す
ペティグリューが動けない隙にやらなければ
「! それは」
ルーピン先生が気付いたように言う
が、出処は秘密なので何も言えない…
「あがっ…」
口を開かせて無理やり飲ませる
「あぁ…あ」
ゴクン
(よし、飲み込んだ)
ヴィオラは言う
「答えなさい、あなたがハリーの両親を裏切ったの?」
「そうだ」
「一体なぜ?」
「怖かったのだ、闇の力に恐れをなした」
「どうしてシリウスに罪を?」
「アズカバンはごめんだからだ
仕方なかった、あの強大なヴォルデモートの前では……」
真実を話してくれた
やはりこの薬の効き目は抜群だ
残しておいて良かったと思う
「え?どういう……」
ハリーが不思議そうに言う
それにシリウスが答えた
「ベリタセラム
真実薬だな」
その通りだ
真実薬
またの名をベリタセラム
この薬は、数滴で全ての真実を話してくれるというもの
ヴォルデモートですら、その闇の全てをさらけ出すという薬だ
これはとある縁で貰った
そのとある縁とは聞かないで欲しい……。
(ほんとクィレル先生はどこで手に入れたんだろう………)
「えぇ?どうしてそんなもの持ってるのよ!
それに、なんで呪文をっ」
「正気の状態じゃ、ベリタセラムの物質を変えられちゃうからね」
「っ…はぁ、本当に理解が追い付かないわ……」
「あはは……」
ハーマイオニーはため息をついては呆れたように見てくる
まあ、普通の学生はそんなもの持ってないからだ
「仕方なかった……仕方なかったんだ」
「……」
ペティグリューが突然呟いた
まるでうわ言のように繰り返して言う
そのまま聞いた
「殺されそうだった……我が身が可愛かったのだ…
シリウス、君ならどうした?
秘密を守り、潔く自害でもしたか?」
「当然だ、私なら死ぬ!
人を裏切るくらいなら死んだ方がマシだ!」
ペティグリューの問いにすぐさま答えるシリウス
一瞬だけ、ハリーがシリウスを涙目で見ていたのが見えた
が、それは見ないふりをした
彼の気持ちにズカズカ踏み込むようで、気が引けたのだ
やっと勘違いが解けて、全て分かったのだから、ハリーもシリウスに家族として接したいだろう