第32章 アズカバンの囚人
ルーピン先生が言う
「君は疑問に思わなかったかい?
ただのネズミは12年も生きやしない
なのにそいつは君とずっと生きてきている」
スキャバーズを見やる
スキャバーズは未だロンの手の中で暴れ、逃げようとしている
ペティグリューはよっぽどシリウスに会いたくないのだろう
どうすれば早く解決出来るだろうか
上手くいけば、シリウスの無実を皆に知らせる事が出来るかもしれない
原作でも映画でもシリウスは囚人のままだが、それを変えればきっと、シリウスとハリーが一緒に暮らすことが出来る
そのためには、ペティグリューを上手く魔法省の元に連れて行かなければ
ルーピン先生が言う
「でも、今はやせ細っているようだがね
そいつはシリウスの話を聞いてから元気をなくしたんじゃないのかい?」
「こいつはその猫が怖いんだよ!
そいつがスキャバーズをいちいち食べようとするから元気がないんだ!」
「いや、この猫はそいつを食べようとはしていない」
「え?」
シリウスがクルックシャンクスを撫でながら言う
クルックシャンクスと言えば、気持ちよさそうに目を細めて、しっぽをパタパタさせている
「こいつは私が出会った中で一番賢い猫だ
この猫は私の正体に気付いていたのだ
そのネズミの正体もな
やがて私の狙いを汲み取り、そいつを私の元に連れてこようとした
だから何度もネズミを襲った
まあ、それは叶わなかったが…」
「だからクルックシャンクスはいつもスキャバーズを睨んでいたのね」
ハーマイオニーが納得したように言う
確かにいつも、クルックシャンクスはスキャバーズに会う度、敵意を露わにしていた
だがしかし、疑問が残る
「どうして、私はシリウスの元に連れてこられたの?
あの時、私が野を歩いてると、クルックシャンクスがシリウスの所に連れて行ってくれたんだけど…」
クルックシャンクスが人を連れてくる場面なんてなかった
それどころか、人を連れてくるなんてリスクがある
シリウス・ブラックだとバレない可能性が無いわけではないのに
その疑問に、シリウスは答えてくれた
「こいつはどうも、君が大好きらしい
主人であるそこの少女を連れて来なかったのは私も分からないが、代わりに連れてくるほど信頼されているようだ」