第32章 アズカバンの囚人
先生の目は敵を見る目そのものだ
かつての親友を裏切った男
今はそう映っている
だが、やはり友はどこまでいっても友のまま
「奴を見つけた、ここにいる」
シリウスが言った
「奴はどこだ?」
「そこだ」
聞かれたシリウスは指を指す
その指は、ロンを指し示していた
正確には、ロンの持つネズミ
「しかし、それならなぜ今まで正体を現さなかった?」
「…………」
シリウスは黙る
ひどい記憶なのだろう
とても寂しい記憶
だからこそ、口にするのも悲しいのだ
ルーピン先生は察したかのように言う
「もしかしたら……いや、それなら……
まさか君は、入れ替わりになったのか?
私に何も言わず、自分だけで?」
シリウスは答えない
声を出さなかった
が
「!」
ゆっくりと、頷いた
「っ……」
ルーピン先生は歩み寄る
この12年間を埋めるかのように、着実に進み
「やはり君は、裏切ってなどいなかった」
「あぁ、そうだ
私の友よ」
お互いに力強く、抱きしめ合った
しかし友情に浸っている場合ではない
「駄目よ!そんなっ…
信じてたのにっ!!
ルーピン先生はシリウスとグルだったのね!先生は狼人間よ!だから授業を休んでたんだわ!!
そしてシリウスを城に手引きしてたのよ!!」
「違うんだハーマイオニー、私の話を…」
「ずっと騙してたんだ!!
先生はブラックと友達で…!
僕は先生を信頼してたのに!」
「ハリー、頼むから説明させてくれッ」
「僕達皆に嘘ついてたんだ!
狼人間なんかが教師にっ……」
『シレンシオ(黙れ)』
「むぐっ!むぅ……ふ……」
呪文を唱える
途端に、ロンが話せなくなった
「黙りなさいロン」
力強くそう告げる
ヴィオラの行動に、その場にいた誰もが驚いていた
皆、目を見開いている
ハーマイオニーが泣きそうになって叫ぶ
「何をしているのヴィオラ!?
先生達はハリーを殺そうとしていたのよ?!
あなただって、ルーピン先生が人狼だって気付いてたじゃない!」
「…確かに、気付いてた
ハーマイオニーと同じで、予想はしてたよ」
スネイプの授業の日を思い出す