第30章 銀の花の闇
慌てて向かうと、突然後ろから杖を背中に突き付けられたと
「一体誰が…」
「分からないんだ、だけど、その人は君を助けて欲しいって」
「え?」
『何者だ』
『黙れ、暴れるなら、私はお前を殺さなければならない』
『…何が目的だ』
『この先のツリーハウスに女の子がいる
彼女は今ボガートに襲われている、だから助けて欲しい』
『え?』
『呪文はリディクラスだ、忘れるなよ』
『は?ちょっ』
そのまま、男は去っていってしまったらしい
(それってもしかして……)
シリウス・ブラックじゃないかと思った
ボガートに襲われていたが、正体を晒す訳にはいかないので、偶然近くにいたセドリックに助けを求めたという事だろう
「それで来てくれたのね」
「あぁ、びっくりしたよ、君が取り乱していたから」
「ごめんなさい」
「平気だよ、怪我がなくて良かった」
セドリックは本当に優しく笑ってくれる
その笑顔が眩しくて、すごく安心した
ギュッ
無意識にセドリックの服を強く握ってしまう
だが、セドリックは気にせず背中をさすり続けてくれた
「もう大丈夫だよ」
その声が、すごく穏やかなもので
「っ」
また、涙が溢れてきそうだった
セドリックはすぐさま気付き、服の袖で拭ってくれる
それが本当に優しいもので
何もかもが、安心する
頬を触られたまま、彼を見る
「?」
セドリックはなんだろうという顔をしている
なんていえばいいか分からなかったので、ただただ伝えたい一言を言った
「ありがとう」
いつも仲良くしてくれて
いつも一緒に話してくれて
いつも助けてくれて
いつも、笑わせてくれて
ただ、そう伝えたかった
次の瞬間
「セド…」
「ごめん、今はこうさせて」
セドリックに、抱きしめられた
トクン
トクン
セドリックの心臓の音が聞こえる
胸に顔をうずめるような体制なので、彼の吐息がより大きく聞こえた
自分とは違い、大きな体
それはもう男性のもので、顔が赤くなっていくのを感じた