第12章 賢者の石
「謹慎中じゃ……」
ヴィオラがポツンと呟く
するとロンが
「また何か企んでるんじゃない?」
と疑うように言う
ヴィオラ達はただ黙っていていた
「……………………」
(クィレル先生…なんで…)
箒に乗るクィレルは真剣な顔だ
何かを企んでいるようには見えない
「あっ」
クィレルが動いた
服の中から杖を取り出し
『ペリキュラム!(花火よ上がれ)』
そう叫んだ
「わあ!」
途端に彼の杖から光が出てきた
そして空へと向かい、パァン!と破裂した
「花火だ!!」
クィレルは箒に乗ったまま杖から花火を出し続けている
赤、青、緑、黄色
たくさんの色の花火を操り、生徒達全員に見えるように破裂させている
ワアア!!
歓声が聞こえてくる
皆花火に見とれているようだ
でも、ここにいる四人は違う
「何のつもりなんだ?」
「やっぱり危険よ、先生達を呼んでこなきゃっ」
「待って!」
「どうしたのヴィオラ?」
人を呼んでこようとするハーマイオニーを引き止める
ハリーが疑問に思い聞くも、ヴィオラは黙ってずっとクィレルの方を見た
「…………」
クィレルを見つめる
すると
「!」
笑った
クィレルが、ハグリッドに渡したはずの色紙をこちらに見せるようにかざした
まるで、「受け取った、ありがとう」と言わんばかりに微笑んだ
それは、いつの日か医務室で見た時と同じ笑顔
自信に溢れた頼もしい笑顔だ
(受け取ってくれたんだ…)
つられて、ヴィオラも笑ってしまった
クィレルと目が合い、お互いに笑い合っている
会話は要らない
目を合わせるだけで良かった
しばらくして、クィレルは箒を動かした
そしてそのまま、ハグリッドの小屋の方へと飛んでいってしまった
「行っちゃったわ」
「結局なんだったんだろ?」
「さあ?何がしたかったのか?」
「お礼を言いに来たんだよ」
「「?」」
ヴィオラの言葉に全員が?を浮かべた
でも、それは気にしない
ただただずっと未だ舞い散る花火を見た
くるくると、たくさんの色に変わって咲く火花を眺める
汽車が出た
生徒達を乗せて、ホグワーツを離れていく
それは、本の1ページのように、美しかった
さあ、夏休みが始まる