第2章 出会い
蕾side
震えも涙も収まったが、人前で泣いた恥ずかしさで「ごめん」と言いながら今度は下を向く。
浦「謝んなよ。元はと言えば俺が悪いんだし。それより、お前のこと紹介したい奴らがいるから、着替えに行くぞ」
蕾「着物…?作業着っちゃうん?」
付き人と言うぐらいだから、てっきり相応のものを着るのだと思っていたが、どうやら違うらしい。かと言って彼のように華やかな着物を着るわけでもないだろう。
浦「付き人だから、他の弟達と同じ着物は着せられない。それにお前、女にしては背が高いからな。合う着物を見繕ってやんなきゃだろ。これも雇い主の仕事」
蕾「へぇ、そうなんや…。渉が見繕ってくれるんなら安心出来るなぁ。楽しみや」
さっきまで泣いていたのが嘘のような笑顔。その顔は心の底から嬉しそうな顔だった。
浦「…着いたぞ。ここが俺の部屋。弟達呼んでくるから、少し待っててくれ」
蕾「わかった」
浦田を見送って少々部屋を見渡す。当たり前だが純和室で、衣桁には綺麗な羽織がかかっている。緑を基調とした菊柄の羽織。
床(とこ)には掛け軸と、白い菊がメインの生け花が飾ってある。
蕾(そう言えば、渉の源氏名も「江戸菊」やし、菊が好きなんかな…?)
しばらく眺めていると、廊下から数人の足音が聞こえ、スっと襖が開けられる。
弟達「「「こんにちは!江戸菊花魁の指示で着付けに参りました!」」」
蕾「お、お願いします…?」
元気いっぱいの、10歳くらいの男の子達3人がが着付けてくれるらしい。蕾はされるがままに大人しく着付けてもらった。
数分後
着付けも化粧もヘアメイクも終わり、1人の男の子が浦田を呼びに行って戻って来た。
子1「江戸菊花魁!こちらです!」
浦「はいはい。案内ありがと…な…」
浦田は綺麗に粧し込んだ蕾を見て言葉を失った。
化粧は薄めの紅がよく映え、髪も丁寧に結われており、落ち着いた柄の淡い黄緑の着物が女性らしい柔らかさを引き立てる。
先程のよく分からない服よりも断然似合っていて、何より綺麗だった。
蕾「あ、渉!どう?変とちゃう?」
浦「…すっげぇ綺麗///」
蕾「何で渉が照れるんよ。まぁええわ、ありがとう♪」
浦「ん…///」
それじゃ、と手を引いて少し先の少し大きめの部屋へ案内される。
新たな出会いは蕾を迎えてくれるだろうか。