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風男塾

第3章 瀬斗光黄♠︎僕だけを見てください


私には、必ず欠かせない日課がある。
店のドアを開けると、
カランコローン…
とドアベルの音が心地いい。

店「お帰りなさいませ、お嬢様。」

入り口前に立っていた店員ーーすなわち執事に、声をかけられた。

…そう、ここは執事喫茶だ。
私は毎日、放課後ここに来ている。
執事喫茶そのものに興味があるのはもちろんなんだけど…もう一つ、大きな理由がある。

光「お嬢様、何をお召し上がりになりますか?」

そう、この人…瀬斗光黄君。
私は、毎日光黄くんに会いにここにきている。その笑顔を見るだけで、嫌なことも辛いことも忘れられた。
だから私は、この店が大好きだった。

愛「じゃあ…カフェラテとドーナツを!」

私が注文を頼むと、光黄君は天使のような笑顔で、

光「分かりました、お嬢様。では、ごゆっくりどうぞ。」

と言って、カーテンの向こうへと消えた。

…しばらくして、店を出ようと思い、お会計を済ませた。ドアを開けようとすると、店員がドアノブに手をかける。
するとその時、後ろからコツコツと靴の音が響いた。

光「僕がやりますよ、手を引っ込めて下さい、先輩。」

いつもの透き通った声からは想像もつかない、ドスの効いた声だったから、最初は誰か分からなかった。

店「なっ…お前、なん…」

光「行ってらっしゃいませ、お嬢様。」

光黄君は、いつもの優しい声に戻って、ドアを開けてくれる。
訳が分からなくて突っ立っている私の耳元で、光黄君がささやいた。

光「お願いです、お嬢様。僕だけを見て下さい。」

私の心臓の鼓動が、途端に速くなる。
震える足で店を出て…走った。
休まずに走り続けて、家に着いた途端、自分の部屋に入る。鍵をかけて、電気もつけずにベッドに飛び込んだ。

愛「僕だけを…見て…下さい…。」

光黄君の言葉を繰り返し言ってみる。
あれは、ただのサービスだったのかなぁ…。それとも…。
そんなことを考えているうちに、私は眠ってしまった。
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