第11章 遺書
『この遺書が誰にも読まれぬよう…そう思いながらも書いています。
継子にも恵まれ、次世代に残せるものがあるのは何とも嬉しいことです。
私は大したこともできませんでしたが、鬼の祖は後世の誰かが斬ってくれる…そう信じています。鬼殺隊として生きたことを誇りに思います。
私の罪に関して、少し書き残しておきます。
人を殺すというのは、鬼を斬るより容易いことです。刀なんて使わなくても、頸を斬らずとも人は殺せるものです。
私は分厚い本で父親を殴り殺しました。父はすぐに息絶えました。今でも覚えています。
人は簡単に死にます。私だって同じです。父も殺そうと思えば私を殺せたでしょう。
皆様も、すぐに死にます。あなた達が刀で斬り合えばすぐに死ぬでしょう。誰かを殺せるでしょう。
鬼殺隊の刀は人を救うためにあるのだと、どうか忘れないでください。鬼を斬るのは人を救うためです。
鬼殺隊で最高階級の柱に選ばれた時…それは私の場合、入隊と同時でしたが。私は生きようと思いました。
生きて人を守ろうと思いました。
人を殺して、私は人の命の儚さというか、あっけなさをしったものです。10歳の少女でも大の男を殺せるのですから。
人を殺した私が人を救うなど馬鹿なことです。ですが、私は儚い人間を守らずにはいられませんでした。
守って救われる命があるのなら。儚い命のために泣く人がいるのなら。
私は人を救おうと思ったのです。
さて、継子のことについてですが。
私はあの子をこの道に連れ込んで、挙げ句の果てに一人残してしまったことが、少し心残りです。
最後に。
もう思い残すこと今生にはございません。私は後世に託します。皆様、ありがとうございました。
この結末に、文句も不満もございません。』
「師範、何ですかそれ」
「遺書です」
「遺書を書くなんて死ぬつもりなんですか」
「まだ死にませんよ」
「僕らもし死んでも会えますか」
「私は今生に未練がありませんので、きっと生まれ変わらないと思いますよ」
「僕は会いたくなると思います」
「生まれ変わるなら全て忘れて新しい人生を歩きたいものです」
「それでも、僕は会いに行くと思います」