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【降谷零】なにも、知らない【安室透】

第2章 突然現れた女


やっと1つ大きな仕事が片付いて、事後処理まで終わったのが午前2時。
久しぶりの降谷の家に帰宅したときは午前3時を少し過ぎたところだった。
しばらく家人の居なかった部屋はキンと冷えきっていて、リモコンで暖房のスイッチを入れて、そのままお風呂を沸かす流れ作業は頭を使うことなく身体が勝手に覚えていて。
スーツをハンガーにかけてワイシャツを洗濯機に突っ込めば疲れきった身体に寒さが丁度いい。
冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを半分ほど飲んで、そのまま浴室へと向かう。
明日、というかすでに今日だが。予定は夕方からポアロ以外急な案件が入らなければないはずだ。

湯船に浸かって頭の中を整理する。
次の予定、次の計画、さらに次の案件。
そして小さな探偵と、FBIのこと。
自然と眉間に力が入って、ふっと苦笑をもらす。

「風呂くらい、ゆっくり入りたいもんだ」

小さく呟いた声は浴室内に反響する。
それと同時にぶくぶくと投げ出した足の間から水泡が上がってくる。
何事だ、と身構えるのが早かったのか、バシャンと音を立てるのが早かったのか、突然目の前に見たこともない裸の女が現れて━。

さすがの降谷零も一瞬、動きが止まった。

「だ、な、…誰だっ!」

腕を掴んで引き上げれば、溺れましたとでも言うようにゲホゲホと噎せる女は僅かに目を開いたかと思うと、そのまま意識を手放した。
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