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【降谷零】なにも、知らない【安室透】

第4章 何者


この世界に存在しないモノになってしまった私は、目の前のイケメンにされるがままになるしかなかった。

生年月日、血液型、家族構成、生い立ち、
過去の病気遍歴諸々。

まあ、平々凡々に過ごしていた私には病気は無縁だったけれど、家族構成は少しだけ躊躇してしまった。

本物の家族は居ない。
孤児院の前に生後まもなく捨てられていた私は自分のルーツを知る術を知らなかった。
手紙ひとつ添えられていなくて、気付いた職員が慌てて病院に連れて行くと、おそらく産まれたばかりだろうと診断された。
へその緒の状態や、身体に出ていた黄疸から判断されたようだ。

だから拾われた日が私の誕生日。
家族は、あの施設にいた恰幅のいい白髪の園長先生。
そしてあの頃を一緒に過ごした子供たち。

曲がらずグレずに育ったのはあのいつも優しい笑顔の園長先生のおかげだろう。
寂しいと思った事もないし、パパやママに会いたいと思ったこともない。
どこかに血を分けた肉親がいるならば、産んでくれてありがとうとお礼を伝えられるくらいには、なに不自由ない暮らしをさせて貰えていた。
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