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【降谷零】なにも、知らない【安室透】

第3章 混乱


湯船で寝てしまって溺れかけた事が過去に一度だけある。
あの時も徹夜明けの始発帰りだった。
身体が暖まってほどよくアルコールが廻って、寝ては駄目だと思うほどに瞼は重くなる。
気付いたときには浴槽のお湯を少し飲んでしまって激しく噎せた。
あの時が一番命の危険を感じたかもしれない。



はぁと小さくため息を吐いたイケメンは先程の怖い顔から少し雰囲気が柔らかくなる。
こんな時でも、イケメンの真顔は迫力があるな、なんて考えている自分が居た事は出来れば気付かれたくはないけれど。

「昨夜、君は突然俺の前に現れた」

徐に口を開いたイケメンは、信じられない事を言い出した。

よりにもよって股の間から私が出て来た?!
いや、イケメンの股なら大歓迎ですけど?
いやいや、そうじゃない。
それじゃあまるで…。

「所謂トリップ、か」

イケメンの唇が伝えた言葉と、自分の思考が重なる。
そんな非現実的なこと起こるわけがない。
そう考えれば考えるほどに、その単語がぴったり来るんじゃないかと考えが纏まっていく。

「どこの国にも、どの地方にも、似たような神話や言い伝えはあるから、可能性がゼロではないはずだが」

なんで、お前が?俺のところに?
とでも言いたそうな視線は、いくらイケメンから発せられるものだとしても居たたまれない。
むしろイケメンだからこそ、居たたまれないというか。

「なんか、すみません」

思わず謝ってしまいたくなるような恐怖のような感覚に襲われて、口をついて謝罪の言葉が出てしまっていた。
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