第4章 指南
翌日–––
「今日は実技だ。お前には最低限の身を護る術を習得してもらう」
「よろしくお願いします」
城内の道場で光秀さんと向き合い、私は礼をした。
「おや。今日はやけに素直だな」
「無駄死にだけは、ならないようにしようと思いまして」
(もし戦で死ぬようなことがあるなら、私のために誰かが犠牲になったりするには嫌だ。)
あの戦でも光秀さんに守られた。
もしかしたら、私のせいで光秀さんが死ぬこともあったかもしれない。
「ほう……?」
からかうような、見透かすような、笑い混じりのこの眼差しはやっぱり苦手だ。でも–––
(光秀さんのことも苦手だからって、避け続けていたら、いつまで経ってもこの人の本質は掴めない)
「光秀さんに教わったことをしっかり身につけて、いつか見返してみせます」
「そうか、楽しみにしているぞ」
眼光を少し和らげ、光秀さんは笑みを深めた。
「さて、今日教えるのは簡単な護身術だ。習うより慣れろ、まずはどこからでも俺にかかってくるといい」
「わかりました……!」
慎重に間合いをとって、光秀さんの動きを見つめる。
じりじりと光秀さんを壁の方まで追い詰めて……
(今だ!!)
ダンッ!!
と、床を強く蹴って、一歩踏み出した!
(あれ!?)
思い切って体当たりした先は、無人の空間だった。
「!! いった…ぁ…っ」
派手に転んだ私を、光秀さんが楽しそうに見下ろす。