第4章 指南
「信長様の右腕と左腕なのに、犬猿の仲なのか……」
「あの人たちは、両極端だからこそ均衡が取れてるんだ。秀吉さんは信長様に心酔しきってる。命がけで主君に忠義を尽くす、家臣の見本みたいな人だ。光秀さんはその反対。主君に仕えることの損得をいつも天秤にかけて、適度な距離を測ってる」
(家康の言ってること、なんとなくわかるような気がする……)
「信長様の小姓としては、いつ信長様の御前でケンカが始まるかわかんなくて、ハラハラしちゃうよ」
「実は、秀吉様から『茜が光秀にいじめられていたら報告しろ』と頼まれました」
「過保護だね、あの人。こんなひ弱な子を、あの光秀さんが本気で相手にするわけないでしょ」
「うさんくさいとこもあるけど、とびきり頭の切れる人だから、先生にはピッタリだと思うよ」
「そうですね……。光秀様はただ者ではないお方だと、私も思います」
(みんな、光秀さんに一目置いてるんだ。政宗も光秀さんのあとを追いかけていったし……光秀さんが織田軍の中で重要な位置を占めてるのは間違いなさそう)