第16章 水色桔梗の言葉を
「え……!?」
「あの人はやっぱり裏切り者だった……安土のほとんどの人間が、そう確信しただろうね。こうなるともう庇う手立てがない。捕まってしまえば、即座に斬り捨てだ」
いら立たしげな家康の口調は、頼むから見つかるなといいたげだ。
「家康、私も捜しに……っ」
「駄目に決まってるでしょ、馬鹿じゃないの? 誰かが、光秀さんをおびき出すために、お気に入りのあんたを人質に使うと言い出しかねない」
(え……っ)
「あんたもよく知ってるでしょ? あの人には、内部にも敵がたくさんいること。わかったら、部屋で大人しくしてなよ」
「……っ、わかった。ごめんなさい」
「……どうなったかは、ちゃんと知らせるから」
ためらいがちに私の髪をくしゃっと撫でると、家康は外へ飛び出していった。
…………