第16章 水色桔梗の言葉を
「これで、織田軍にそなたの居場所はなくなった。今すぐに我らが主のもとへ参れ。我らが主に、忠義を示せ」
「もちろん、そうさせていただくつもりです」
「これを使え」
犬に餌でも与えるように、牢獄の鍵が投げ入れられる。
「ありがたく頂戴いたします」
「私は先に主の元へと発つ。主の待つ地は……」
「京、でしょう?」
「っ、なぜそれを……」
「おや、当たりでしたか。あれこれ考え事をした甲斐がありました。何せ、暇だったもので」
「……そなたはまるで、あやかしのようだな」
使者は、魅入られたように、光秀に目を奪われていた。