第16章 水色桔梗の言葉を
日ノ本全土に不吉な蜘蛛の巣が張り巡らされていく中–––
その中心に、義元はいた。
「……今、なんと?」
「だから『処分した』と言ったのだ。何度も言わせるでない。義元。」
義昭は脇息にもたれ、女中に酒を注がせながら、さも億劫そうに言い捨てる。
西方の小国を離れた義昭は今、京へとのぼり、とある屋敷に身を隠していた。
義昭の信奉者のひとりである屋敷の主は、義昭一行を歓迎し、一番豪奢な部屋を彼に差し出した。
先にその屋敷へ身を寄せていた義元は、祭りの夜の顛末を、義昭から聞くことになったのだった。