第14章 化け狐と今宵かぎりの想い
佐助くんは考え込むように黙り、私も舞台へと注意を戻す。
物語の主人公は、一座の男性が演じる、とあるお殿様だ。
自らの過ちで落ちぶれてしまったお殿様が、ずる賢い手をつかい権力の座へ返り咲こうとしてる。
そこへ、妖艶な青年になりすました、化け狐が現れる。
武将とは思えない光秀さんの優雅な動きのひとつひとつに目を奪われてしまう。
お殿様に取り入った青年は、天下取りの手伝いをすると言い、あれやこれやと入れ知恵を始める。
話の筋書きが読めた観客は、狐の言葉に右往左往するお殿様の様子に、腹を抱えて笑い出した。