第14章 化け狐と今宵かぎりの想い
ついにお囃子の音が鳴り響き、一夜の特別な祭りが始まった。
次から次へ華やかな芸を繰り広げる一座の面々、舞台を囲み賑わう村の人たち、そして–––
一段高い場所に設けられた豪奢な観覧席では、大名と『義昭様』がくつろいでいる。
義元さんの姿は、見当たらない。
(佐助くんと幸村は、義元さんに会えたかな……)
別れ際に見た義元さんの姿を思い浮かべると、騒つく胸を沈めるために小さく息を吐いた。
「どうした、浮かない顔をして」
「いいえ、何でも……」
(光秀さんには話せない。……でも、秘密があるのは、お互い様だ)