第13章 大切な人
「実はそうなんだ。目撃情報をたどって、ようやくたどりついたのがこの国だ。茜さん、知ってることがあれば教えてほしい」
「実は……」
お祭りの舞台に義元さんが現れた時のことを話すと、幸村の顔に緊張が走った。
「あいつと一緒にいたのは、この国の大名と……『義昭様』って奴で、間違いないのか?」
「……うん。豪華な身なりで、身分がやたらと高そうな人だった」
治りかけの傷が疼いて、胸にそっと手をあてた。
抱きしめてくれた時の義元さんの悲しそうな瞳が思い浮かぶ
(だけど……昨日の夜のことまでは、さすがに話せない……)