第10章 偽りの夫婦
「うちの一座はこんな大舞台は初めてでなあ。演目の相談に乗ってくれんか、光さん」
「俺でよければ喜んで」
「茜さんには、うちの踊り子連中と一緒に踊ってもらおうかな」
(わ、私も……?!旅の道中、少しだけ舞を光秀さんに習いはしたけど……)
実際に舞台を前にすると、付け焼き刃の技術で一大イベントのステージに立てるとはとても思えない。
「座長さん、あの……っ」
答えあぐねて言葉が詰まった時、
(あ……っ)
光秀さんにぐいっと肩を抱き寄せられ、心臓が跳ね上がった。
「せっかくの機会なんですが、ご遠慮しておきます。実は、妻はまだ見習いの身でして」
「そうかいそうかい、なら裏方を手伝ってもらおうか。にしてもおふたりさん、目の毒だねえ」
「何せ新婚なもので」