第10章 偽りの夫婦
「旅芸人に扮して、例の国へ潜り込む。身なりが『らしい』ほど、身分の高い人種は俺たちを『旅芸人』というくくりでしか見なくなる」
「さすが、ずる賢い……」
「こら、『ずる』じゃなく策略だ。茜、未来の夫に、もう少し優しくしてくれないか?」
「な、何言ってるんですか!信長様たちのことは話を合わせただけです!」
(この人はもう……、何が未来の夫よ!ほんと、意地が悪い!」
「お前には踊り子の衣装を用意した。着てみろ、茜」
「わかりました……。着替えるので、外で待っていてください」
「おや、俺は気にしないぞ」
「私が気にするんです!」
くすくす笑う光秀さんの背中に両手をついて、廊下へと押し出した。