第2章 Kiss her hand
佐助くんは現代でタイムワームの研究をしていて、今は私が現代に帰るのにタイムワームの観測をしてくれていた。
タイムワームの出現が観測されたら、報せにきてくれると言われてる。
(生き延びて……か…)
佐助くんの言葉を思い浮かべて、私は現代と変わらない青い空をぼんやりと見上げた。
…………
「それじゃ、いよいよ開戦なんだな」
「うん、残念ながら」
「おい、義元、『残念』だと……? ふざけんな。俺やお館様たちにとっては、待ちわびたようやくの好機だ」
「……もちろん、それも理解してるよ」
「相変わらず戦に興味がねーんだな、お前は。どうして伝令役を買って出たんだよ」
「名高い安土の城下町をひと目見てみたくてね。……いずれはここも、戦火に見舞われてしまうかもしれないから」
義元は、少し悲しそうに一人、呟いた。
…………
(戦はいつ頃始まってしまうんだろう……)
市で買った物を各所に届けたあと、頭はそればかりで占められた。
廊下に差し込む西日は、眩しくてどこか香ばしい。