第9章 偽りの許嫁
あんな風に男に組み敷かれ、どれだけ恐ろしかっただろうか……
男の自分には考えつかないような恐怖だろう
(だが……ああする他なかった……)
使者との密会を見られたのは不覚だった。
裏切りが発覚したことで茜が自分から離れていくだけなら、さして構わない。けれど–––
あの使者に茜の顔を見られた。このまま放っておけばあの男は茜を消そうとするだろう。どんな手を使っても
(……脅し傷つけることでしか、この先お前を守れない)
茜の柔らかな手のひらに、包まれた時の感触を思い出すように自分の頰に触れる。