第9章 偽りの許嫁
「光秀様、独り占めはよくないよ? 茜様、俺のことも構って♪ ねっ?」
「ええっと、私もそうしたいんだけど……」
(正直、私も息が詰まりそうなんだよ……蘭丸くん)
チラッと光秀さんの表情を伺うけど、もちろん蘭丸くんと話をさせてくれる様子は毛頭なさそうだ
「茜と過ごすと、もれなく俺もついてくるぞ」
「光秀様は遠慮しとく。茜様、行こ!」
私の袖を引っ張る蘭丸くんの手を、光秀さんが手刀で払った。
「いったーい! 骨折れたー!」
「どれ、見せてみろ。ちゃんと折れているか確かめておこう」
「何それ怖っ!」
蘭丸くんはぴゅっとそばから飛びのき、頬をふくらませる。