第9章 偽りの許嫁
「ねえ、茜様! これって一体どういうことなの?」
「ええっと……」
「気にするな、蘭丸」
「無理。俺だけじゃなくて城のみんなが気にしてるよ」
城内で行きあった蘭丸くんは、私と、すぐそばに寄り添う光秀さんをじーっと見据えた。
「茜様から離れなよ、光秀様。ここ数日、べったりじゃん!」
光秀さんの裏切り現場を目撃し、恐怖と安堵が入り交じる奇妙な一夜を過ごして以降、指南に加え、光秀さんの仕事を手伝うという名目で、四六時中一緒に行動するよう命じられた。
実際は、書簡の整理を少し任せてもらうくらいで、大して役には立っていない。
(『もっと厳重に監視する』って言ってたけど、ここまでとは……)