第6章 疑心暗鬼
「ないでください。大事な話があってきたんです。」
「…ほう。舞を連れて大事な話とは。では、聞こう。」
ムキになる私と舞ちゃんの様子を見た光秀さんが、何かを感じ取り、笑みが消えるとすぐに沈着な武将の顔になった。
舞ちゃんが怯えた様子で、私にした説明を光秀さんに話す。
その時の様子を詳しく舞ちゃんに聞き出している光秀さんは、指南役をしている時の光秀さんとは違う顔をしている。
初めて馬に乗せられた時、城門で待っていた九兵衛さんが、光秀さんに耳打ちしていた時と同じ顔だ。
その顔は、私の不安を煽る。
「信長様…、大丈夫かな…」
話し終えた舞ちゃんが今にも泣き出しそうな声で、ぽつり、と呟いた。
(舞ちゃん…、好きな人の命が狙われてるなんて、気が気じゃないよね…)