第5章 キセ+カレシ2
『黄瀬くん、今日こそは来てくれないかなー、』
「あぁ~…、すみません。その日は練習があるんで…ちょっと…」
『…うーん、。そっかぁ、……じゃあまた空いてる日に連絡ちょうだいね』
「…あ、はい。すみません」
ピ。
人工的な音がするそれを素早くポケットにしまう。
そして微かにふ、と口元を緩める。
以前の俺ではあり得ないっスよねぇ…
昔の自分を嘲笑うと後ろから肩を捕まれた。
反射的に振り向けばそこにはいつも眉間にシワを寄せて、この淡い灰色の瞳で睨んでくる我が部のキャプテンがいた。
「あれっ、笠松センパイじゃないっスか!なんで一年の教室にっ?」
笠松センパイはそういう俺を見てはぁとあきれたように溜め息を吐くと俺が先程手に持っていたケータイが入っているポケットに目線を落とした。
「……お前、ケータイばっか見てんな…目ぇ悪くなるぞ?」
笠松センパイはそういうと俺の肩から手を降ろし持っていた何かの書類を整えた。
「なんの用っスか?」
「お前のクラスの担任に話があるんだよ」
「あ、俺呼んで来るっス」
「いや、いい」
体を反転させ、その場から去ろうとした俺の腕を強く掴み制す。
振りかえると難しい表情をした笠松センパイがいて不思議に思う。