第10章 いつもいつも来ませ
今思えば、それは全部私が私に思っていたことなんだけどね。
まあ、自分に自信が無くて、随分と荒んでいたのだ。
その日は、日中の防衛任務だった。ゲートが同時刻に複数発生し、隊員たちは一人一人バラけて対処していた。
『葉瑠さん、そのまま200m先に、1体反応があります。急いでください。ちょっと場所が悪いかも……』
「時任了解!警戒区域の端っこだね。外に出られると大変だ」
屋根の上を走っていくと、見えた。モールモッドだ。しかも、今にも警戒区域を出ようとしている。何だろう、目的があるような動きだ。動きの先を見て、すぐにわかった。モールモッドが向かう先に、少年がいる。急がないと。
「アステロイド」
射程に入ってすぐ、アステロイドを射つ。モールモッドに当たって、動きが一瞬止まった。距離とスピード重視に設定したアステロイドでは、モールモッドを倒すには至らない。その間も全力で駆ける。間に合え、間に合え、あんたみたいな機械兵に、もう誰も傷付けさせるものか。絶対に守ってみせる。旋空の射程に入った。屋根から飛び降りて、弧月を振るう。
「旋空弧月!」
『反応消えました!』
オペレーターの声が聞こえてほっとする。そしてはっとした。私がボーダーに入った理由を思い出した。大規模侵攻の後に決めたのだ。あの化け物を倒して、友人、家族を守りたい。街の人を守りたい、そのために力を得たのだ。その力で今、守れた。すごく清々しい気分だった。
「一般人がいたので、保護して連れていくね」
『了解』
弧月を仕舞って、立ち尽くす少年の方へ歩いていく。
「驚かせてごめんなさい。ボーダーのものです。ここは危険です。一緒に来ていただけませんか?」
少年には一通りの説明をして、記憶封印措置を施すため、ボーダー本部へ連れてきた。その準備ができるまで、私と少年は控え室で待機している。
「すぐ終わるから、心配しないでね。えーと、きみ中学生?名前は?」
「中3だよ。名前は犬飼澄晴。お姉さんの名前は?」
「時任葉瑠」
これが、澄晴くんとの出会いだった。
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