貴方に出会うそのために〜イケメン戦国 徳川家康・上杉謙信〜
第10章 孤独感
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烈が去った稽古場では、家康が一人佇んでいた。
我ながら、冷たい人間だと自覚する。
冷ややかに放った言葉を真に受け、烈の顔が少し青ざめたのを思い出す。
かすかに胸が疼くけれど、自分自身の感情の揺れを、無視する。
(可哀そう、なんて、思わない。)
そうは思っても、形の良い瞳に涙を浮かべ、それを流すまいと必死に堪えるあの姿……
一瞬、幼い頃の自分が、重なって見えた。
(…………だから、何)
震える誰かを温めるために、優しく差し伸べる手など、持ち合わせてはいない。