第8章 アメリカでの仕事
あれから、零くんとは、終わりのないメッセージのやり取りが毎日続いている。内容なんて大したことないものばかりだけど、メッセージが届く度に画面を見ながらニヤけてしまいそうになる。
二人とも仕事があるし、零くんの休みは土日昼夜関係なく不定。多少無理して時間を作ればしょっちゅうでも会えるんだろうけど、お互いの負担にならないようそれはしないでおこうと決めた。
(ちなみに水野先生にはあっさりバレた。でももういい。何も責められることはしてないから)
あれ以来零くんと会ったのは一度だけ。
仕事終わりに夜ご飯を外で食べて、お酒も飲めるカフェに移動して。ずっと話が尽きなくて、おそらく二時間くらいは喋りっぱなしだった。
学生時代の思い出話から、彼が警察官を目指したキッカケ、好きだったものの話とか……
そんな気はしてたけど、学生時代の零くんは、成績も身体能力も超優秀、おまけに喧嘩まで負け無しだったそう……
聞けば聞くほど、彼がとんでもない人に思えてきて。私なんて、あの能力を持ってること以外は極々平凡な人間だ。いや、平凡以下かも……
「零くんってすごいよね……天は二物を与えてるよね」
「そうか?僕は別に天才肌って訳じゃない。努力があっての今だ」
「でも努力してるとこ、人には見せないタイプでしょ」
「……隠してるつもりはないけど……そうなのかもな」
つい、お酒で気も緩んでか、ずっと心にあった事が口から漏れる。
「……私なんかには勿体ないよ、零くんは」
「何言ってるんだよ……だからいいんだ。僕が信用出来ないか?」
「ううん!そういう意味じゃない!ごめん」
少し怒らせてしまったかもしれない。零くんの眉間に縦筋が入ってる。
「別に僕は今ここで大声で叫んだっていいぞ?が大好きだって」
「……っ!!?」
周りには人も沢山いるのに!慌てて両手の手のひらを彼の目の前に突き出した。
「が嫌がるだろうから叫びはしないけど。でももうそんなこと言うなよ」
「うん……言いません」
穏やかな顔付きに戻った零くんは、私の手を取ってその甲に小さくキスをして、そっと握ってきた。
大声を出されるよりは遥かにマシだけど、これも中々……