第2章 恋はまだ始まらない
翌日、いつも通り大学へ出勤し、会議を終え。
早めの昼食を学食で済ませて、校門近くで警察のお迎えを水野先生と共に待つ。
「三日も続けてかぁ……これも人の為なんでしょうけど」
「代われるもんなら代わってやりたいが……こればっかりはにしかできんからな」
「ですよね……あそうだ、今回の警備責任者って初めて見る名前の人ですよね」
「ああ。電話の感じだと結構若そうだったぞ」
「へえ……若いんならエリートですかね」
「かもしれんな。お近付きになれるよう俺がお膳立てしてやろうか?収入は安定の国家公務員、将来は高級官僚かもしれんぞ」
水野先生がニヤニヤしながらこっちを見てくる。
ちなみに先生は、私の忘れられない“あの彼”の事を知っている。それどころか、私は先生に過去の恋愛遍歴もほとんど把握されている。
自分から進んで話した訳ではないんだけど……私に“なにか”あると、この人にはいつもすぐにバレてしまうからだ。
恋人ができたり、失恋したり、悩んでる事があったりすると必ずと言ってもいい程見抜かれる。
精神科医ならでは(?)のトーク術に誘導され、気付けば毎度全てを白状させられる羽目になるのだ。
「……めちゃくちゃいい男だったら!ですよ!私誰でもいい訳じゃないんですからね!」
「だがな、もそろそろ“あの彼”から卒業してもいい頃じゃないのかー?」
「分かってますよー……」
そんなの自分が一番分かってる……
警察ってちょっと苦手だけど、エリート公務員だと思えば結婚相手には素晴らしいかもしれない。
まあ、いくらエリートだろうと好きになれなければ結婚なんて考えられないし、その前にまず向こう様のご意向がある。
そうこうしていると、門の前の道路に重厚な国産セダンが一台停車した。多分警察の車だ。
と思ったんだけど、運転席から降りてきたのは金髪の青年だったので違ったみたい。
でもそれも違ったみたいで。
その金髪の青年が私達の前にやって来て、一礼し警察手帳を開いた。手帳には“警視 降谷零”と書かれている。
「初めまして。警察庁の降谷です。さんと水野さんですよね。今回はご協力よろしくお願いします」
「はい。よろしくお願いします」
「お願いします」
今回の警備責任者はまさかのこの金髪の彼のようだ。