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恋のはじめかた【名探偵コナンR18】

第7章 サヨナラも告げないまま


零くんに送ってもらい、家に帰ってきて。当然だけど部屋に入れば一人きり。いつも一人だけど……今日はなんだかぽっかり穴が空いたように虚しい。


あの日もそうだったかもしれない。






“あの彼”と遅い昼食を食べた後、彼は「少し出かけてきます」と言って部屋を出ていった。

てっきり翌日までずっと一緒に過ごすものだと思ってたから、拍子抜けしてしまって。

特に何をするでもなく、しばらくボーッとテレビを眺め。

お風呂の掃除をして。

夕食こそはさっと食べれるよう、ある程度準備をして、彼の帰宅をただ待っていた。

連絡先も交換してないから、いつ帰ってくるのかとか、電話のしようもない。
出掛けようにもその間に彼が帰ってきたら、彼が家に入れなくなってしまうし、家に居るしかない。




結局外が暗くなった頃に、ようやく玄関のチャイムが鳴り。小走りでドアを開けに行き、ドアの外に居たのは、勿論“あの彼”だった。


「……お帰りなさい」

「はい。只今戻りました」


彼はにっこり微笑んでいる。嬉しい、というか、誰かと“おかえり”と“ただいま”の挨拶を交わすのってかなり久しぶりで、変に気分がフワフワする。両親が死んでからはずっと一人暮らしだったし。


「誰かに“おかえり”と言われたのは久しぶりです。悪くないですね」

「昴さんもそうなんですね!私もなんです。久しぶりすぎて歯が浮きそうなくらい……あ、あの、ごはん、ある程度準備しておいたんですけど、食べます?」

「……どちらかと言うと……今は食事よりさん、でしょうか。お昼も遅かったですしね」


部屋に入ってきた彼の纏うオーラが一変して甘くなった気がする。髪に指を通され、心臓が大きく跳ね出した。
心の準備が出来てなかっただけに、言葉が出てこない。


「僕が帰ってくるのを、待っていてくれたんですよね」

「はい……」

「待っていてくれる人が居るというのは中々良いものです」

「で、ですかね……」

「ええ。とても」


頬に手が添えられて、自然と少し上を向かされて。唇が重なる。

彼の掛けている眼鏡の縁が触れる所が冷たい。でも、反対に身体の中にはどんどん熱が篭っていく。

たっぷりと時間をかけて、唇は離れて。

腰に手を回され、部屋の中へ進んでいき。

狭い部屋だ。あっという間にベッドまで辿り着いた。
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