第6章 好きの定義とは
「あれ?零くんって髪の毛サラサラストレートだと思ってたけど……ここはちょっとクセあるんだね」
「ああ、これだろ?勝手に出てくるんだよなー困るやつだ」
「そう?私は結構好きかも」
「……がそう言うなら……いいか」
「うん。なんか可愛くていい」
朝からシトシトと雨が降り続く日の昼下がり。零くんが二度目のカウンセリングの為研究室にやって来て、先週と同じように、水野先生と三人でテーブルを囲んで雑談を始めて数分後のことだった。
「なあ……お前ら……一週間前と雰囲気が違いすぎるぞ」
私と零くんがここまで親しく話すようになってた事に先生は驚いているみたいだった。
「前回のカウンセリングの後に二人で食事して、それでかなり打ち解けた感じだよな」
「うん。先生だって、私達に仲良くなってほしいから食事に行かせたんでしょ?」
「そりゃそうだが……それなら俺はおらん方が降谷さんも気楽でしょう。今日はと二人で話してください」
「えっ?」
「……僕は、構いませんが……」
「まあ同じ部屋には居るから、話の内容はある程度聞かせてもらう。じゃ、よろしく」
今日のカウンセリングは私が一人で行う事になったようだ。
先生がパーテーションの向こうへ消えていき、いつもの椅子を引いて座った音がした。
急に二人にされて、会話が途切れた。
「……さっき何の話してたっけ?」
「僕の髪の話だ」
「そうだそうだ……あの、今まで何っ回も聞かれてウンザリしてたらごめんね、やっぱり零くんってハーフなの?」
「そうだけど。僕はこの日本で生まれ育った日本人だ」
「日本人なのは分かるって」
「そうか?昔はそうは見られなかったからな」
「昔はハーフの子って珍しかったもんね」
「だな……前も話したよな、昔はその所為で仲のいい友達ができなかったって……でも僕には一人だけ親友ができたんだ」
「へえ……」
「小学校の五年生だったかな、転校生が来て」
「どんな子?」
「長野から来た奴で。ソイツは、クラスで浮いてる僕にも臆せず話しかけてくれた。優しくて、強い奴だった」
零くんが斜め上を見ながら穏やかに、昔話をし出した。
今日カウンセリングで話したかった事っていうのはこれなのか?